色778

不思議なものを追いかける/らせんの宿、phantom twins

謎・なぜ人は孤独に耐えられないのか

謎は謎だけど、今回は少し趣向を変えて。

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人間だけが兼ね備えてしまったもの

犬の猫の赤ちゃんは生まれて間もなく母親の母乳を求めて自力で動こうとします。それに比べて人間の赤ちゃんは歩くどころか、寝返りさえもうてない。個人差はありますが一般的に寝返りをするまでに5~6ヶ月、自力で動けるようになるまで半年から1年かかります。

他の哺乳類と比べたとき、どうも人間は一年ほど早く生まれすぎているそうなのです。

動けるようになるまで、赤ちゃんは身の回りの全てのことを大人に頼らなければ生きていけません。ということは周りの人に受け入れられるかどうかが赤ちゃんにとっての死活問題です。
こういう事情から人間は他の哺乳類と違って、受け入れられる欲望──所属願望とでも言うべきものが強くなったと言われています。

人間の場合、この所属願望が生存願望に匹敵するそうです。だから友だちのグループや家族や社会に受け入れてもらえてないと感じれば生存願望を飛び越えて、自死さえ選択してしまうことがあるのです。この傾向は他の動物では見られません。

『人づきあいがラクになる心理学の教え・井上知子』より

吉村昭さんの『漂流』のレビューで、人は孤独には耐えられないと書きましたが、その理由が補強できました。そういうことだったのかー。

見つめなおすとき

私たちは子どもの頃から競争のなかにいます。そういう教育で育ったので競争を勝ち抜くことが安心感を得る方法だといつの間にか信じ込んでしまっています。社会が競い合える人材を求めているという事情もあります。

しかし一歩引いて考えてみると、競争を勝ち抜いて得られる安心感は一過性のもので、人間が生まれながら持つ所属願望を満たす安心感には変えられません。

最近売れている自己啓発本をいくつか読んでいると、人間の感情は脳内の信号に過ぎないのだから、客観的に自分を分析して脳内の信号をコントロールしようという主旨の本が多く見られます。

社会の目まぐるしいAI化のあおりを受けて、人間も自己の性質を見つめなおすときがきているのでしょうか。

大事なこと

所属願望を満たすにはどうすればいいのでしょうか。
所属願望とは共同体に属することを願う気持ちであり、共同体とは家族、友人、サークル、学校、会社のことです。そこに属しているだけで人は安心感を得られるのです。
ただし、所属願望を満たすために自分を押し殺して、言いたいことも言えない共同体に属していてはまた別の苦しみを産みます。


ありのままの自分でいられる場所、自分を認めてくれる存在こそがここで言う所属願望を満たす共同体です。それは家族になるケースが多いですが、友人グループや親戚、ごくまれに会社ということもあり得ます。社会的な成功者と言われる人たちほど、仕事とは別の共同体に属し、互いに認め合う場を大切にしているとも言われています。

これを読んでいる方がもし、不安や孤独を強く抱えているとしたら、必要なのは共同体かもしれません。共同体の人数は十人でもいいし、一人でもいい。それが、あるかないかで大きく違うのです。

当たり前のことしか言ってないな、と思う人もいるかもしれませんが、意外と気づきにくいポイントです。ここ数年内に起こった自死事件の顛末を見ると所属願望が生存願望を超えて人を突き動かした事例がいくつかあります。

人間の性質をよく知って、お互い満ち足りた人生を送りたいものですね。

  1. 2017/08/30(水) 20:11:27|
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