色778

不思議なものを追いかける/らせんの宿、phantom twins、小人戦記ザキ/DMM TELLER様あの晴れた日の向こうで

たった一人の生還

1991年12月29日午後8時頃に起きたヨットレースでの転覆事故。
レースに参加していた7名の乗ったヨット「たか号」は小笠原諸島父島沖で大波の呑まれ、その際の衝撃で一人が亡くなり、残る6名は夜の海へ投げ出されてしまう。

6名はライフラフト(救命いかだ)に乗り込んだものの、ラフトは非常に狭く、しかも備えつけられていた備品の多くも流されてしまっている。

ライフラフト
こんな形状

残されたのは、九枚入りのビスケットが一つ、飲料水が一本という絶望的な状況。イーパブ(救難信号発声装置)は作動しない。
(アカ汲みやスポンジなどもあったが、食料と飲料を失ったのが致命的)

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ここから6名の想像を絶する漂流が始まります。
山での遭難は怖いですが、海は海で怖い。山は場所によっては水場や沢がありますが、海はどうしようもない。食糧不足もさることながら、6名の方々も水を得られず、最後まで水を欲しながら次々と亡くなっていきます。

この転覆事故は「たった一人の生還」の著者である佐野三治さんだけを残して、他の方々は全員亡くなってしまうのですが、この漂流のなかで起こったことがこの本では克明に描かれています。

床の濡れた狭いラフトでのじめじめした感じ、臭気、不安、恐怖、限界を超えてからの幻覚、息苦しさなど圧迫感がすごい。現実に起こった事件を佐野さんご自身が書いているので、小説にはない生々しさがあります。一人称で読みやすく、一気に読み終わりました。

なぜ自分だけが生き残ってしまったのか、というのは悲劇的な体験をされた方に共通する思いなのでしょう。
生き残った者の務めともいうべき使命感が著書からはひしひしと伝わってきます。ありのままに事実を残そうという思いが執筆の原動力になっているように思えました。オススメです。是非。

  1. 2017/07/07(金) 01:01:35|
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