色778

不思議なものを追いかける/らせんの宿、phantom twins、小人戦記ザキ/DMM TELLER様あの晴れた日の向こうで

最悪の島・漂流(吉村昭)

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漂流(吉村昭)

江戸時代の天明年間(1781~1789)シケに遭い、黒潮に乗ってしまった男たちは、絶海の火山島に流れ着く。

そこは無人島で水が湧かず、樹木すらも生えない。過酷な日々に男たちは次々と倒れていくが、土佐の船乗り、長平は12年間に及ぶ歳月を経て、ついに生還を果たす。

漂着先としては最悪の部類です。
上記に加えて、火山島の周囲に他の島はなく、近く通る船も全くない。救出の目はない。


この火山島、鳥島と呼ばれる島のことで、東京都庁から南に582kmも離れており、八丈島より青ヶ島より更に南にあります。

明治時代から戦前にかけて、一時期は人が住んでいたようですが、噴火や地震などがあって現代では東京都に属する無人の島。江戸時代にはこの島に流れ着く漁業関係者も多く、島で多くの人が亡くなっています。

唯一、長平たちが恵まれていたのは、この島はアホウ鳥の群生地だったこと。アホウ鳥を(生で)食べながら、雨水を啜り、飢えと渇きをしのぎますが、島での過酷な日々が次々と仲間の命を奪っていきます。

仲間を失ってからの長平の姿は痛ましく、見るに耐えなかった。空腹も乾きも辛いが、人間は孤独には耐えられない生き物なのかもしれない。

話は始終、絶望感が漂っているものの、他の漂流者が現れたときや、生活環境が少しずつ変わっていくところなど、「お」と思えるところもあって最後まで楽しめました。

島で12年間を生き抜いて長平は生還を果たすのですが、初めに書いたように長平を取り巻く環境は完全に詰んでます。
長平たちが何をしたのか、その方法は書かないでおきます。人を押し上げる力は希望と執念なのかもしれない。

記録小説というのか、資料を基に年代を追っているので人によっては読みにくいと感じるかもしれません。人物よりも環境や説明に力が入ってます。個人的にはオススメです。

  1. 2017/07/13(木) 21:39:20|
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