色778

不思議なものを追いかける/らせんの宿、phantom twins、小人戦記ザキ/DMM TELLER様あの晴れた日の向こうで

妖怪の正体は……人間?

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豆腐小僧。行動・豆腐を届けに来る。画像はWikipediaより

今回から妖怪も取りあげていきます。なぜなら妖怪こそが不思議の化身だからです。

妖怪とは奇妙な姿形で不気味なもの。関連書籍を読めば不思議と記憶に残るエピソードがあったりして怖いだけでもない。妖怪によっては豆腐を届けに来るだけとか、よくわからんのもいる。
実体が岩や木や道具だったりする妖怪もいて、全然ピンとこない。かといって現実に祀られているものを粗末に扱うとよくないことが起こりそうな気もするから、とりあえず神社で見かけたら手を合わせておく。

総じてなんだかよくわからない。

そうです。それが妖怪です。昔の人もそうでした。なんだかよくわからないのです。しかし彼らの中にこそ、人々の暮らしの知恵や恐れや偏見が投影されており、人間が人間を知るためのヒントが隠されているのです。

では妖怪第一弾は一つ目小僧。

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目一つ坊(一つ目小僧)。画像はWikipediaより

江戸時代の文献によく出てきます。
妖怪を信じない人は、こんなやついるわけねーと思うでしょう。

では考えてみましょう。江戸の人々は、なぜこんな奇妙な姿のものを思い描いたのでしょうか。作家さんたちがネタ不足に苦しんだあげく奇怪な生物を生み出してしまったのでしょうか。その可能性はあります。想像の産物かもしれません。

しかしこんな説もあります。

日本には古くから“たたら製鉄”という製鉄法がありました。日本固有の製鉄法で1000年以上の歴史があります。

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たたら製鉄による踏みふいご。画像はWikipediaより

映画もののけ姫にも同じタタラ場のシーンがありますね。あれも踏みふいごという送風機で、燃焼に必要な空気を送り込んでいるシーンです。
この製鉄に従事した人々の崇めていた鍛冶の神が、一つ目の神でした。製鉄に従事していると長時間高温の炉を見つめるので、従事者は目をやられるのです。
ところでギリシャ神話にはサイクロプスという巨人もいます。この巨人も鍛冶の神です。

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ギリシャ神話のサイクロプス。画像はWikipediaより

日本とギリシャ。遠く離れますが、遥か昔にギリシャ神話が日本にも伝わってきたのでしょうか。ロマンのある話です。

こういう妖怪もいます。一本だたら、という一つ目、片足の妖怪。ペルソナなどのアトラスゲームでその存在を知った人もいるのではないでしょうか。

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一本だたら。画像はWikipediaより

上記の踏みふいごを見てわかるとおり、製鉄従事者は目と同様、足も酷使するので足が使い物にならなくなってしまう。この一本だたらも製鉄従事者を表したものと言われることがあります。“たたら”なんてそのままですし。


さて、ここまでは事実を羅列してきました。ここからは、思い込みで語るオカルティストになります。

仮に二匹の妖怪が製鉄従事者を表したものだったとすれば、製鉄従事者とはどのような人々だったのでしょうか。

鉄は包丁、農具、工具、建築や戦争、あらゆるところで必要になります。だからこそ1000年以上に渡って作られ続けてきました。
製鉄は危険かつ過酷な作業ですが、誰にでも出来る仕事ではありません。専門的な知識と技術を要します。となれば、農村からちょっと人を集めてというわけにはいかない。農村から派遣されて製鉄に携わった人はいたかもしれませんが、基本的には技能を持った人たちが担っていたと考えるべきです。彼らは原料の砂鉄や木炭を得られる山間部に居を構えていました。

そして農村の人たちはそんな彼らをお化けでも見るような目で眺めていた。
江戸時代になると、製鉄従事者は妖怪となって登場します。そこにはやはり偏見があったと言うべきでしょう。
一つ目小僧や一本だたらの真相はそんなところかもしれません。

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大板山たたら製鉄遺跡。画像はWikipediaより

製鉄従事者をサンカと結びつけて考える人もいます。
サンカ。聞いたことのない言葉ではないでしょうか。歴史小説が好きな人なら知っているかもしれません。

サンカとは山間部に住み、川漁や竹細工を作って生活していた人々です。戸籍を持たない漂流民で、その実態は謎に包まれています。

明治期にはおよそ20万人いたとされているので、明確に身分が分けられていた江戸以前はもっと大勢いたかもしれません。
川漁や竹細工のような小物を作るだけで生活の糧が十分だったとは到底思えない。ひょっとするとサンカが製鉄に携わっていた人々なのでは? という話を聞いたことがあります。

サンカは生活の実態が把握できないほど情報に乏しく、彼らが発生した経緯にも諸説あります。
飢饉によって山へ移り住んだ人々がそのまま定着した説や、弥生時代にヤマト王権によって滅ぼされた勢力の生き残りであるとする説。そんな漂流民などはなく、サンカはただ一時期山間に住んでいただけの人々とする説。

いろいろありますが、彼らが存在したことは確かなので、その解明が待たれるところです。
教科書に載らない歴史として、とても興味深いですね。

妖怪から話が逸れてしまいましたが、一つ目小僧や一本だたらの姿に製鉄従事者を忌み嫌う心理が投影されているとすれば、自然、妖怪の姿にも物悲しさが漂ってきます。

ということで妖怪の正体は偏見の生んだ産物ということになりそうです。今回はそんなところで。


  1. 2017/08/18(金) 19:52:22|
  2. 妖怪