色778

不思議なものを追いかける/らせんの宿、phantom twins、小人戦記ザキ/DMM TELLER様あの晴れた日の向こうで

オカルティストは屈しない(創作)

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閑散とした商店街を歩いていると、前を歩いてくる男と肩がぶつかった。
私は無言のまま足を止めることもなかったのだが、

「あんた赤コワさんじゃないかい?」

えっと思って振り返ると、眼鏡をかけた細身の男が私を見ている。知らない顔だ。神経質そうな顔がどことなく大学教授を思わせた。

「やっぱりそうだ。あんたオカルティストの赤コワさんだ、見てるよ、あんたのブログ」

腑に落ちない。顔出しはしていないのだから。

「あんた、卑怯なやつだよ。謎や不思議に言及しながら肝心なところに話が及ぶと、自分はオカルティストだからと言って逃げる。それは結局、結論に責任をもてないからじゃないのか」
「どうしてそんなこと……あなたは?」
「俺かい? 俺は電磁気学を教えてるK大学の教授さ」
「大学教授……」

大学教授がどうして私のブログにケチをつけてくる? 接点がないはずだ。

「いいか、俺たち研究者はな、言葉に責任を持つ。いい加減なことは言わない。それにひきかえ、あんたらオカルティストは何だ? すぐ超常現象だの、宇宙人だのと結びつけて、論破されそうになったら自分はオカルティストだからと言って知らん振りだ。恥を知れ!」

言うなり男は拳を突き出してきた。拳が私のみぞおちにめり込む。ぐぼあ。間髪入れに男の蹴り。まともに受けた私の体は後ろへ大きく飛ばされ、ポリバケツに衝突した。バケツの中身がこぼれ、生ゴミが覆いかぶさる。ひどい臭いだ。

「ははは、いい姿になったじゃないか、赤コワ。だが俺たちの怒りはこんなもんじゃ収まらない」

と言って男が懐から取り出したものに戦慄する。拳銃だ。いや、ただの銃ではない。長すぎる銃身。しかもそれが二つに割れたこの形状は──ピンときた。相手が電磁気学の専門家ならばレールガンしかない。それしかない。

「電磁投射砲、レールガンってやつだ」
「やっぱりか。小型化は難しいと聞いてたけど……完成してたのか」

私は腹を押さえながら立ち上がった。

「防衛省の技研と共同で開発したのさ。さあ、今日限りブログをやめると言え、赤コワ」

銃口が私に向けられた。迷うことはなかった。ブログをやめなければ撃たれる。カッと開いた男の目は本気を物語っている。

「ブログをやめると言え、赤コワ!」

命には代えられない。「わかった、やめる」口に出そうとして、喉に引っかかりを覚える。それが自分にとってひどく辛い選択だと気づいたのだ。胸が苦しい。心が拒否していた。違う。オカルティストは恥知らずではない。

「……め……い」
「ん?」
「……めない」
「何?」
「ブログはやめない!」
「てめえ、赤コワ!」

ガションとレールガンが鳴った。何の音かわからないが安全装置が外れたのかもしれない。

「待って! 聞いてくれ、まずは聞いてくれ!」
「……」
「私も何度も怪しいオカルト関連の動画を見てオカルトティストはただのホラ吹きなんじゃないかと思った! でもわかったんだ! オカルトが探求への間口になってるかもしれないって!」
「……どういうことだ?」
「それがいかがわしいものや怪しいものだったとしても、人の関心を引くことが真相究明への原動力になり得るって!」
「そんな高尚なもんかよ、オカルトが!」
「アメリカの大統領候補がUFOの情報公開を公約にしたんだよ! どれだけの人間が関心を抱いているのか、あなたにもわかるはずだ! 世論そのものなんだよ、オカルトは! そこまで無意味なもんじゃない!」
「くっ……」

長いにらみ合いの末、男はレールガンを下げた。

「いいだろう、今回は見逃す。だが次はないと思え。赤コワ、あんた狙われてるからな」
「狙われてる? 誰に? 政府か」
「そんな末端じゃねぇよ。もっともっと上にいる本当にやばい連中にだ」

組織と聞いて、二つ三つ思い当たる。世界を裏から牛耳ってる団体のどれかだろう。あれか、あれか。謎を深追いして失踪してしまった先達は何人もいる。ついに私も危険人物にエントリーされてしまったということか。
男が立ち去った商店街は不気味なほど静まり返っている。遅れて押し寄せてきた恐怖に総毛立つ。私は逃げるようにその場を離れた。


という妄想でした。またこのパターンか。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。ありがとうございます。

  1. 2017/08/21(月) 23:18:46|
  2. オカルト